本記事は、YouTubeで発信されている「乳がんサバイバー看護師」ゆりさんの体験談をまとめたものです。
ゆりさんの担当医である、大阪医科薬科大学 乳腺・内分泌外科 岩本充彦先生の「ゆりさんの一人の患者として、また看護師として、まだ見ぬ誰かを、あるいは多くの乳癌患者を、自身の経験を語ることで勇気づけたいとする想いを繋げていきたい」というお気持ちに賛同して作成しています。
本記事は、ゆりさんご本人の主観を優先しているため、科学的根拠等について医師監修は行っておりません。
そのため、ご紹介内容の実例は全てを保証するものでは無いことをご留意ください。
抗がん剤治療には複数の種類があり、種類によって身体に及ぼす影響が変わります。
今回は、術前に受けた2種類の抗がん剤のうちの1つ目、「AC療法」についてのゆりさんの体験談です。
抗がん剤が及ぼす吐き気は4つの区分がある
抗がん剤は、殆どのもので吐き気が出てきます。その吐き気は以下4つの区分に分かれています。
①:高度催吐性
②:中等度催吐性
③:軽度催吐性
④:最小度催吐性
高度の定義は90%以上の方が吐き気を催すもの、最小度の定義は10%未満の方が吐き気を催すものです。
AC療法は高度催吐性があり、一番吐き気が強いものでした。
他にも乳がんで使われるお薬でEC療法、 CEF療法、TAC療法と呼ばれるものは、高等度催吐性のある薬剤になります。
AC療法で投与された薬は「アドリアマイシン」「シクロホスファミド」
次に、実際の薬の内容についてお伝えします。
まず私はイメンドカプセルの内服を飲んでから、アロキシとデカドロンと呼ばれる吐き気止めのお薬を点滴で受け、そしてAC療法としてアドリアマイシンとシクロホスファミドを使ったという形になります。
この AC療法ですが、薬の名前が聞いていたものと違うと思われる方もいらっしゃいます。それは、2種類の名前を持っている薬があるためです。
薬には、「実際の製剤名」「一般的に呼ばれる名前」「商品名」があり、
アドリアマイシン→ドキソルビシン
シクロホスファミド→エンドキサン
という名前で薬を投与されている方もいるかと思います。
AC療法に使われる吐き気止めは3種類
吐き気っていろんなトリガーがあるんです。
例えば私たちが口の中に手を突っ込んだときに起こるのも1つのトリガーですし、痛いことをされた時 に起こるのもトリガーです。
色々な方向から吐き気が出てくるので、複数種類の薬を使って吐き気を止めています。私の場合は3種類の吐き気止めが出てきました。
抗がん剤を使ってしまうと、こういう吐き気止めのお薬が出る前までは、入院をしないと動けないんですよね。今はこういうお薬があることで、外来通院での抗がん剤の投与が可能になっています。実際はかなりしんどいのですが…。
AC療法の抗がん剤投与ペースと投与時に起こったこと
AC療法では実際にどのようなことをするのかという話ですが、私の場合は2週間に1回の投薬を4クール行うものでした。
実際にその2週間では最初の1週間目が勝負でした。
まず投与した当日。アドリアマイシンを投与している時は、最初からガーっと吐き気のような、二日酔いに似たムカムカ感のようなものが襲ってきました。ぐるぐると気持ち悪い感じがしました。
もう一つのシクロホスファミドに関しては、投与中は頭痛がしんどくて、除夜の鐘の中に入って、思いっきり「カーン」と打たれた時のような感覚がありました。
吐き気もありましたし、頭痛もあって気持ちが悪かったです。ただ、投与が終わって5分くらいするとその頭痛もスーッと消えていったので、最終的には胸のむかつきと吐き気が残っていました。
私の場合、午前中の投与だったので、1回目はその後普通にご飯を食べられる程度の吐き気ではありました。その日は二日分のイメンドカプセルと三日分のデカドロンをもらって帰りました。
それから1週間の流れとしては、3日目くらいまでは吐き気などがあり、倦怠感も強く、何かをするにはしんどい状態でした。4日目くらいになると、吐き気はあっても動けなくはない程度。少し午前中に動くと午後はしんどいかなぁ…という感じでした。
1週間経つと元気になってきて、「動けるかな」という感覚がありました。
まとめると、最初の1週間目は動くために身体との相談が必要で、2週間目は普段通りに生活できるという印象です。
抗がん剤の効果を学習するにつれ、副次的な反応も
一方で、抗がん剤の作用の経験が蓄積していくことで、体力的にも精神的にも削られたと思います。
人間って学習する生き物なので、「これをすると気持ち悪い」という感覚を知ってしまうと、まったく関係ないところで気持ち悪くなったりするんですね。
例えば、薬を見ただけで気持ち悪くなる。これを予期嘔吐と言うのですが、私もそういう感覚がすごく強くて、病院に行くだけで気持ち悪くなってくることもあって…。
特に4回目ですね。これで最後だとわかっていても、とにかく行きたくなくて。本当にしんどくてしんどくてしょうがなくて、今思い出しても涙が出るぐらい嫌でした。
4回目の診察をした段階で、先生に「体調どう?」って言われて、「いや、もうめっちゃしんどいですね」って。今まで結構笑いながら「いや大丈夫ですよ。頑張ります」って言ってたんですけど、それが言えなくなったんです。
抗がん剤治療中は心の支えになってくれる人が大事
結局、先生に「どうする?1週間飛ばす?」って言われたんです。私が限界だって気付いたみたいで。その時点で私は治療を止めたかったんです。すごく嫌で。
ただ、その日にたまたま、普段仲良くしてくれているお友だちが全員来てくれたんです。化学療法センターって、きちんと書類を書いたら知り合いを入れてくれるんですね。
私は3回目までもちょこちょこ友だちが来てくれて、常識の範囲内でわいわいしてたんですが、1週間延ばしてしまうとそれがなくなると思ったときに、「いや今日頑張ります」と伝えて、4回目まで乗り越えることができたんです。
治療中ってすごく一人だと思うんです。色んなことが気になって、「なんで私がこんなしんどいことをしなければいけないんだろう」「何か悪いことしたかな」と、自分を責めてしまったこともあったんです。
ただ、そうやって人の支えがあることで、あの4回目の抗がん剤を乗り越えていけたんです。
今、治療を受けられている方で、まわりに内緒にしている方ってすごいと思うんです。私も本当に限界になった時にしか言えなかったのですが、言えるような相手がいることで、それが心の支えになって治療を継続できたというのも一つの経験だったと思います。
自分の気持ちを話せる相手がいたり、楽しみがあると気持ちを強く持てるので、継続して治療に臨むことができる
AC療法だけでなく、EC療法、CEF 療法の方も参考に
私がお話した内容に関しては、「EC療法」「CEF療法」の方でも似たような症状が出る可能性があるので、これから抗がん剤治療を行う方に「こういう症状が出るんだ」と知ってもらうことで、症状発生時に少しリラックスしてもらえればと考えております。
次回は、抗がん剤で白血球の数値が下がることによる弊害を防ぐための「ジーラスタ」という白血球を増やすお薬のお話や、予防注射についての全体的な感染に関するお話ができればと思います。