食欲不振とは『食べたいという欲求が消失(もしくは減少)している状態』と考えられます。

抗がん薬治療によって、悪心・おう吐、下痢、便秘、味覚異常、口内炎、発熱、倦怠感などが出ると、食欲不振につながることがあります。また、病気や治療と向き合うストレスから起こることもあるでしょう。

十分な量や種類を食べられなくても、すぐに悪影響が出てくるわけではありませんので、無理をしないようにしてください。食事の回数や、時間も気にせず、食べられるときに、食べられる量をとりましょう。

この記事では、食欲不振を引き起こす様々な原因に対する対処法や、あなた自身が出来る工夫についてご紹介します。もし気になるものがあれば、主治医の先生や看護師さん、栄養士さんなどにご相談しながら、無理のない範囲で、ゆっくりと進めてみてください。

原因

食欲不振の原因は様々で、ここにあげることが全てではありません。もしあてはまるものがあれば、下の治療方法もご覧ください。

  • 消化器系への影響:抗がん薬は、胃や腸などの消化器系の蠕動運動(ぜんどううんどう:消化器系が伸びたり縮んだりすることで、体内の食べ物を体の外に出そうとする運動のこと)を弱めることがあるので、食べ物が消化や吸収されにくくなり、吐き気やおう吐、下痢や便秘を引き起こす。それが原因で食欲不振となることがある。
  • 味覚異常:抗がん薬治療により、味覚異常が発現することがあり、食欲不振の原因になることがある。
  • 口内炎:抗がん薬治療により、口の中に白い潰瘍が出来たり、口の中の粘膜がただれたりすると、食事をとることが苦痛となり、食欲不振となることがある。
  • 精神的なストレス:病気や治療と向き合うストレスが、食欲不振の原因になることがある。

症状

  • 食べたいという欲求が消失(もしくは減少)している状態。
  • 抗がん薬治療の副作用(悪心・おう吐、下痢、便秘、味覚異常、口内炎、発熱、倦怠感など)が出ていて、食べることが難しくなっている状態
  • 体重減少
  • 栄養失調:食欲不振によって、実際の食事量が減った状況が長く続くと、栄養失調に

治療方法

食欲不振の原因になる抗がん薬の副作用(悪心・おう吐、下痢、便秘、味覚異常、口内炎、発熱、倦怠感など)については、それぞれの記事にまとめていますので、ご参照ください。

病気や治療と向き合うストレスから、不安やつらさを感じたり、不眠になっていたりしている場合は、少しずつ軽減できるように出来ることから始めていきましょう。

主治医の先生や看護師さん、もし身近にいるときは、精神科の先生や臨床心理士さん、カウンセラーさん等にご相談しながら、抗不安薬や睡眠薬を飲むこともあります。また、食欲不振が長期化するときは、管理栄養士さんのご意見も聞きながら、どのような栄養サポートを受けるのかを考えます。

ご自身で出来る予防策、対応策

食事では、何を食べるか、どうやって食べるか、などの工夫をしてみましょう。

POINT
  • のど越しの良いもの、冷たいもの、やわらかいものが、食べやすいと考えられています。
    一般的には、茶わん蒸し、豆腐、麺類、アイスクリーム、ゼリーなどが勧められていますので、あなたに食べやすいものを見つけてください。もし味覚障害がある場合は、適度に汁気があるものや、酢の物といったほうが、味の変化が少なく楽しめると言われています。
  • 炊き立てのご飯のにおいや、出来立ての料理のにおいがつらいときは、少し冷やしてから食べると受け入れやすくなるようです。
  • 今少し食べたいな、というときのために、小さなおにぎりや、冷凍食品、市販の総菜や缶詰やカットフルーツなど、手軽に食べられるものを用意しておくと役に立ちます。市販の栄養補助食品もおすすめです。
  • お皿に乗せた量は食べ切らなくてはならない、という考えが無意識に働きます。その気持ちが重くて、お箸が進みにくくなることもあるようです。お皿に乗せる量を少なくし、食べ切れたという充実感を感じましょう。
  • 無理でなければ、食事前に体を伸ばす、といったストレッチを入れたり、深呼吸をしてみたりして、リラックスしながら、ゆったりとした体勢で食事をとりましょう。
  • 一人で食べたり、親しい方と食べたり、あなたがその時に望むスタイルを選択しましょう。

あなたが癒されるものを見つけましょう。

POINT
  • 無理をせず、出来るだけあなたの心地よさを優先させてください。
  • 体調が許すときは、少しストレッチをしてみたり、少し歩いてみたり、身体を動かしてみましょう。
  • 好きな音楽を聴いたり、好きなドラマを見たり、日々の生活の中で、好きに囲まれてみましょう。
  • あなたが考えていた『理想の食事』から、今は離れてみる時かもしれません。