注意事項

本記事は、YouTubeで発信されている「乳がんサバイバー看護師」ゆりさんの体験談をまとめたものです。
ゆりさんの担当医である、大阪医科薬科大学 乳腺・内分泌外科 岩本充彦先生の「ゆりさんの一人の患者として、また看護師として、まだ見ぬ誰かを、あるいは多くの乳癌患者を、自身の経験を語ることで勇気づけたいとする想いを繋げていきたい」というお気持ちに賛同して作成しています。

本記事は、ゆりさんご本人の主観を優先しているため、科学的根拠等について医師監修は行っておりません。
そのため、ご紹介内容の実例は全てを保証するものでは無いことをご留意ください。

CVポートとは、パクリタキセル同様、抗がん剤治療の一種です。今回はCVポートの治療の流れやメリット・デメリットに関するゆりさんの体験談になります。

パクリタキセルの治療のための点滴の針が入らず痛かった

まずなぜ私がCVポートについてお話をしようと思ったかというと、パクリタキセルの治療が辛くなってきたからです 。

パクリタキセルを使用して治療している間は、1週間に1回の投与を12回続けなければいけませんでした。

私の場合は約3か月間、毎週左右交互に点滴を取り続けてたんです。

しかし私はもともと血管が細かったのと、パクリタキセルの副作用で浮腫んでいたのもあって、血管が見えにくくて、毎回点滴のルートがすごい取りにくかったんです。

なので、通常点滴の針を入れる腕の内側では全然点滴が取れなくて、ずっと手背の一番痛いところで取っていたんです。

パクリタキセルの治療継続にしんどさを感じ、CVポート治療へ

4回目ぐらいの時、点滴がまた入らなくなりました。

さらにパクリタキセルの薬自体が血管に対する刺激が強くて、投与している時がめちゃくちゃ痛かったんです。

投与中はホットパックをしてもらい、血管を広げて対応していたんですけど…針を刺すのもしんどいし、血管痛もしんどくなったんです。

そこで先生に「CVポートって適用どうなんですかね?」って聞いたら、「あ、入れる?良いよ~!」みたいな反応で…。「いいんかい!それ先に教えてくれよ」って思ったんです。

その時に、「もしかして私からCVポート治療のことを先生に言わなかったら、CVポート治療ができることも提示されなかったのかな?」と思ったので、「こういうこともできるよ」とシェアすれば皆さんの治療がより楽になるのではないかなと思って、発信しました。

CVポート治療は点滴を鎖骨に埋め込んで行なう

CVポート治療は、点滴の先を体の中に埋め込む方法をとるというのが一番分かりやすい説明かなと思います。

点滴を埋め込む場所で一番多いのは鎖骨ですね。

鎖骨あたりに消しゴム大の大きさ…3センチから5センチぐらい皮膚を切って、血管の先に管を入れたものを挿入します。

CVポートのメリットは2つ「安全性」「血管漏出・血管炎リスクの低さ」

CVポート治療のメリットは2つあります。

ポイント

①:点滴の扱いが簡便で、安全性が高い
②:血管漏出や血管炎のリスクが低い

CVポートも普段の点滴同様に針は刺しますが、通常の点滴の場合はしっかり血管の先に管が入っているかを確認しなきゃいけないんです。

一方、CVポートで針を刺す場合は、針が血管に入っていると言うことが既に分かっているので、そのまますぐに薬剤を投与することができるんです。

この簡便で安全性が高いところがCVポートのメリットですね。

さらに、抗がん剤を使う時って看護師は血管炎とか血管漏出をすごく気にするんです。

例えば「点滴をとる時に血管を突き破ってしまって、そこから抗がん剤が漏れていました」という時はステロイドの薬を使わなければいけないですし、患者さんによっては血管炎もすごく気にして点滴をとりますが、CVポートだとそういった血管漏出や血管炎のリスクが割と低いというのもメリットです。

CVポートのデメリットは2つ「発熱や悪寒の可能性」「感染リスク」

メリットだけ聞くとCVポート一択のように思えますが、もちろんデメリットもあるので知っておいてもらいたいです。

ポイント

①:発熱や悪寒が生じる可能性がある
②:点滴の針を入れるために皮膚を切り、傷口を広げることは感染リスクにつながる

免疫力が落ちている人の身体って、異物にすごく過敏に反応してしまうんです。
そのせいで熱が出ることもあります。

例えば点滴を入れる方の首が浮腫んできたり、薬液をポートから投与したときにひどい悪寒があったりした場合にはCVポートを取らなければいけません。

また、免疫力が下がっている時に、点滴を入れるためとはいえ、切開して傷を広げる事はどうしてもリスクになります。

このようにCVポートの治療はメリットとデメリットが表裏一体なので、一概にオススメはできませんが、「こういう選択肢もあるんだ」ということを知ってもらえる一つの機会になればと考えています。

血栓ができてCVポートが詰まることも…

人の身体って怪我をして擦り傷や切り傷ができた時、傷口をなるべく早くふさぐために、血が固まってかさぶたになりますよね。

実は怪我以外にも体内に異物が入ってきた時、そしてその異物によって血球自体が壊れてしまった時には体内で血が固まろうとします。

そうすると血管内の血が固まる場所によっては血栓ができてしまい、血栓のせいでCVポート自体が詰まってしまうリスクがあることも知っておいてください。

CVポートを入れるには簡単な手術が必要だが、入れておいて損はない

国立がん研究センターでは先生が「CVポートを入れても良いんじゃないか」と提案する目安として、以下2点を定めています。

ポイント

①:抗がん剤投与が頻回であること
②:血管が細く点滴のルートが取りづらいこと

CVポート自体を体内に入れるのには、局所麻酔の簡単な手術が必要になります。大体30分から1時間くらいの手術で、CVポートを入れた箇所に3センチから5センチの傷ができます。

そしてCVポートの最大の特徴は手術で挿入した日から使えるということです。ちなみにCVポートは治療が進む中で使う必要がなくなったら取り出すことも可能です。

もちろん取り出す時にも手術が必要ですが、大体20分から30分くらいで簡単に取り出せます。

だから抗がん剤治療がどれぐらいの期間になるか最初は分からなくても、私なら「CVポートを先に入れておく?」と先生に言われたら「入れる」という選択をしていたのではないかと思います。

次回は私の脱毛の状況についてです。

治療を進める中で実際に髪の毛が抜けてくるタイミング、抜け方や最終的に髪の毛がどれぐらい減ったのかということに関するお話ができればと思います。