味覚障害は、抗がん薬治療でよく起こる副作用の一つです。
原因は、味蕾(みらい;舌の表面などにあり、塩っぽい、甘い、酸っぱい、苦いなどを感じるセンサーの役割をするもの)が機能していない、味蕾が味を感知するときに必要な水分(唾液)が出ていない、味蕾で感知した味を脳に伝える神経が機能していない、などが考えられます。
抗がん薬でダメージを受けた味蕾や神経は、徐々に回復しますので、治療終了後、味覚障害は自然と回復することが多いようです。
味蕾が回復するときには、微量栄養素の亜鉛が必要になりますので、摂取することに問題がないときは、亜鉛を多く含んだ食品をとるようにしましょう。
原因
味を感じる一連の流れのどこかで、もしくは複数のところで、抗がん薬によって障害が起こっていると考えられています。
- 味蕾が機能していない:抗がん薬によって味蕾そのものがダメージを受け、味覚センサーが働かない状態。または、抗がん薬の影響で唾液が少なくなったり体調不良となったりすると、舌苔(ぜったい)という舌の上にある白っぽい汚れが、いつも以上に厚くなって味蕾を覆うことで、味蕾が味を感知しにくくなっている。
- 唾液が減少している:味蕾が味を感知するためには水分が必要だが、抗がん薬治療の影響で唾液の分泌が減っている。
- 神経障害:味蕾で感知した味を脳に伝える神経が働いていない。
症状
- 食べ物本来の味を感じない
- 何を食べても特定の味(例えば、何を食べても苦い、など)しかしない
- 食べ物を食べているのに、砂や金属を食べているように感じる など
治療方法
味覚障害を治療する薬剤はありません(2023年9月現在)。治療終了後、自然と回復することが多いため、深く研究されていないことも理由の一つです。
ただ、確証はありませんが、味蕾を回復するときに必要となる亜鉛を補給するために、胃潰瘍に使われる薬剤が有効ではないかという報告があります。
また、舌苔が厚くなっている時は、取り除きましょう。舌を磨くときは、強くこすると、かえって味蕾が傷ついてしまいます。
舌専用のブラシも市販されていますので、それらの利用も検討しながら、優しく行うようにしましょう。
唾液が減少している時は、人口唾液や市販の口腔スプレーなどを用いたり、耳下・顎下・舌下にある唾液腺をマッサージしたりして、口腔内の水分を補ってから食事を始めると改善がみられる可能性があります。
ご自身で出来る予防策、対応策
抗がん薬による味覚障害は、よく起こる副作用の一つですが、治療薬がありません。ただ、抗がん薬の治療終了後に、自然治癒することが多いと考えられています。
出来る工夫を取り入れながら、ゆっくりと時を待つという気持ちでいるのもいいかもしれません。
食事でいいと言われている工夫をご紹介します。
- 抗がん薬治療の味覚障害は、一般的に「うま味」・「塩味」で起こりやすく、「甘味」・「酸味」の変化は少ないと言われています。また、しょうゆ味よりはみそ味、固形物よりも汁物、和食よりも洋食のほうが、いつもの味を感じられるとも言われています。とはいっても、味の変化の感じ方は人それぞれですので、あなた自身の味の変化をよく観察してみてください。
- 意外に感じられるかもしれませんが、カレーライス、丼ものは本来の味と一緒だった、という声もあります。においなど他に問題がなければ、一度試してみてください。
味覚障害が出ている時だけでなく、口腔ケアはとても大切です。
口の中を清潔に保つことは、日々の生活でも大切ですが、治療中はさらに重要度が高まります。
丁寧なブラッシング、舌苔を優しく取る、保湿成分が入っているうがい薬を使う(口の中の粘膜に刺激を与えないため、アルコール成分が入っていないものがおすすめです)、そして、唾液が少なくなっている時は保湿スプレーなどを使う、などを、いつもより少し意識して過ごしてみてください。