本記事は、YouTubeで発信されている「乳がんサバイバー看護師」ゆりさんの体験談をまとめたものです。
ゆりさんの担当医である、大阪医科薬科大学 乳腺・内分泌外科 岩本充彦先生の「ゆりさんの一人の患者として、また看護師として、まだ見ぬ誰かを、あるいは多くの乳癌患者を、自身の経験を語ることで勇気づけたいとする想いを繋げていきたい」というお気持ちに賛同して作成しています。
本記事は、ゆりさんご本人の主観を優先しているため、科学的根拠等について医師監修は行っておりません。
そのため、ご紹介内容の実例は全てを保証するものでは無いことをご留意ください。
ゆりさんの右側にはCVポート(皮下埋め込み型ポート)が入っており、左側の乳房を摘出しリンパ節郭清も終わっています。
今回は、リハビリを兼ねておこなっているストレッチの重要性とおうちで簡単にできるストレッチ方法についてのお話になります。
がん患者にとってストレッチや運動が重要な理由
【ストレッチの重要性と行うタイミング】
①:がん治療は体力勝負なため、体力を維持する必要がある
②:朝起きたときなどに行う
私は現在乳がんの治療中で、右にはCVポートが入っていて、左はリンパ節郭清しているので、私にとって上半身のストレッチは大事なことなのです。
「コロナが怖い」のはみなさん同じですよね。
やはり、がんを患っていると基礎疾患がある部類に入るので、コロナに感染した時に症状が悪化する可能性があり、外に出るのがさらに怖くなってしまいます。
がん治療は本当に体力が大切で、体力がもたず最後まで治療を続けられない患者さんがたくさんいらっしゃいます。
CVポートが入っていてもリンパ節郭清していても「これくらい運動しても大丈夫ですよ」というひとつの目安として、体力を維持するための上半身のストレッチをご紹介します。
1分ほどの軽いストレッチなので、「家で踊ろう」ではなく、「家でストレッチしよう」なのですが、朝起きたときなどに試していただけるとうれしいです。
1分でできるストレッチの方法
ストレッチ方法は以下の流れで行います。
【ストレッチ方法】
① 楽な姿勢で座り、首を2回ずつ回す
反対側も同様におこなう
② 手を組んで体を前にたおし、ゆっくり起き上がる
③ 腕を組んだまま、左右にたおし、お腹を伸ばす
④ 腕を組むのをやめ、肩を回す
前後、2回ずつおこなう
⑤ 両腕を横に伸ばして、手のひらを上下に
⑥ 腕を小刻みに回す
⑦ 最後は腕を上にしてぶらぶら~
簡単ですが、意外としんどい人が多いのではないでしょうか?私は⑤が痛いです。
こんな感じで体幹を伸ばしたり、腕を伸ばして上下に動かしたりするのは、郭清をしているととてもしんどいのです。
しかし回す動きは負担がかかるので、ちょっとしたストレッチが筋トレ代わりにもなります。ただ、痛さを感じる人は無理をしないようにしてください。
スローガン「ワンケア・ワンギフト・ワンリハビリ」
私たち看護師の中に「ワンケア・ワンギフト・ワンリハビリ」というスローガンがあります。
「何か1つケアをしたときに、何か1つ患者さんにギフトを渡しましょう。それがワンリハビリでありましょう」という考え方です。
病院には寝たきりで動けない患者さんがたくさんいます。寝ていると人間の体の筋力は低下し、また関節を動かしていないと関節自体が硬くなっていきます。
機械だと油をさせば滑らかになり動くようになりますが、人間は関節が硬くなってしまうと動かせるようになるまで何倍もの時間が必要になるのです。
関節が硬くならないように「ワンケア」を取り入れます。
たとえば、体が動かせない患者さんの
・体を拭くとき
・頭を洗うとき
・点滴をするとき
など治療のために体を動かす時に、ただ体を拭くのではなく、一度上げた腕を肩にあげて戻してから拭く、という動作を「ギフト」としておこないます。
体を拭くついでに、肩の運動を1つ患者さんにプレゼントするのが「ワンギフト」です。
私たち看護師もできるだけ患者さんに「早く元気になってもらいたい」と思い、さまざまなケアをしていく中で、時間に忙殺されて「リハビリ」まで手が回らないことがほとんどです。
でも、「ワンケア・ワンギフト・ワンリハビリ」を取り入れることで、患者さんの症状が変わっていくことがあります。
前置きが長くなってしまったのですが、家にいる間にこの「ワンケア・ワンギフト・ワンリハビリ」を自分自身にしてあげてほしいです。
私のおすすめはトイレでおこなう屈伸運動です。人間は絶対トイレに行きますよね?
1日に何度かわかりませんが、トイレに行ったあとに1回だけ屈伸をするんです。
またトイレの幅は、だいたい両手で壁を触れるくらいだと思うのですが、壁に手を置いて壁を押すように外側に向かってグッと5秒間ほど押すだけでストレッチになります。
バストアップにも効果的なので、女性におすすめです。
【自分自身へ行う「ワンケア・ワンギフト・ワンリハビリ」】
①トイレに行ったあと、屈伸を1回行う
②壁に手を置き、壁を押すように外側に向かってグッと5秒間押す
ちょっとした時間に「これをしたらストレッチをする」という自分の中でルールを決めて、日々の運動量やストレッチの時間を増やして、ぜひ体力を維持してほしいです。
家にいてどうしても気が滅入ることなどがあると思うのですが、軽い運動をしたりストレッチをしたりの行動に「ワンギフト」をプラスする。
「ワンギフト」を自分自身に与えられるような生活を、みなさんが過ごせるきっかけになったらうれしいです。