今回は、みかさんが再建手術をすると決めるまでの心境の変化について紹介します。

同時再建手術をしないことは、証になると考えた

手術の前に先生とお話して、乳房の同時再建手術をするかどうか先生に聞かれたんですけど、私は「同時再建手術はしない。切りっぱなしでいい」と答えました。
先生には「何で?」って聞かれたんですけどね。

私は全摘した状態を、全摘したからこそ生きているっていう証にしたかったんだと思います。

だから同時再建手術もしたくないと思ったし、「偽物の乳房が嫌だ」じゃないけど、「全摘した状態を鏡で見て、頑張って生きていくぞ」みたいな思いが強かったのかもしれないです。

それでもやっぱり先生には「乳輪・乳頭を切った後、すごく精神的に辛くなるよ」と言われましたが、私は「それでもいいです。取り外しができる、人工乳房にします」とお伝えしました。

その時の先生は「わかった。人工乳房でいくのね」みたいな反応でした。

愛知県の常滑にある、人工乳房を製造している株式会社マエダモールドさんを先生が紹介してくださったので、乳輪・乳頭を切る前から見させてもらいました。

常滑焼のお茶碗があるじゃないですか。
お茶碗がおっぱいの形に似ているから、人工乳房をつくることを思いついたらしいです。

実際に人工乳房を見させてもらった上で、「これを使って生きていきます」と改めて決めて、全摘出した後、すぐ人工乳房を作りました。

人工乳房を実際に使うことで、心境の変化を実感した

人工乳房をつくる時はこちらに来てくださって、できあがったら家に届きます。
そこからは付けたり、外したりしながら過ごしていました。

でも、付けた時に「胸がある」ってなる分、取ると悲しいんですよ

介護士っていう仕事柄お風呂介助もやりますけど、皮膚に人工乳房が付いているので、汗疹みたいになって、かゆくなったりもしました。

悲しかったし大変だったけど、人工乳房があったからこそ、後々再建しようと思えたんだと思います。

それに、毎回検診に行くたびにしつこいぐらいに担当の井上先生と「再建手術はやらないの?」「やりません」というやり取りをしていました。

「なんでそんなに再建手術にこだわるんだろう」と思っていたら、別の方から、「再建手術したら、絶対に、精神的に変わる。みかさんみたいに決断が早い人は、術後になって精神的に崩れるタイプが多い」と言われました。

言われて思い当たったのは、お風呂に入るたびに泣いちゃうことです。

一番嫌だったのは、ブラジャーを着ける時です。
背中から肉を寄せるように着けるために全摘した箇所がえぐれてしまうので、その姿と感触が本当に嫌で、辛くて辛くて泣いていました。

思い当ったことで先生も、私が精神的にダメージを受けやすいタイプだと見抜いていたんだと気付きました。

再建手術について知ることで前向きに取り組めた

「乳房を作ったらすごく変わるよ」と先生に言われたものの、元々作る気がなかったので、再建手術について調べたことも全然なかったし、どんな再建手術があるのかも知らなかったんですよね。

井上先生に「一回でいいから、再建手術の先生に会ってごらん」と言われたのもあって、「一回だけ会います」とお伝えしました。

実際に再建手術の先生に会って、自家組織再建があることを知ってから、考えが変わりましたね

元々私は、乳房にインプラントを入れるのが嫌だと思っていました。
体内に異物が入るのも、冷たいのも嫌でしたし、10年に1回取り外す手術もしなきゃいけないのもありました。

でも再建手術の先生に「自家組織再建という再建方法もあるんだよ、自分の脂肪を使うから冷たくないよ。」と言われて、私は「やる!やるやる!」と即決していました。

自分の性格が不思議だなと思うんですけど、決める時はいつも直感に従っています。

だけど、先生は「待って。全員が全員やれるわけじゃない。再建手術の方法も色々あるから」と説明してくれました。

先生が提供してくれた方法は、ももや背中など体の一部から脂肪を取って、皮膚も全部移植するものでした。

先生が脂肪を取る部位を選んでくれる時に、お腹の脂肪を見て「君はいい脂肪があるね。これは再建に向いているよ」と言ってくれました。
脂肪の厚さが何センチ以上必要など、条件があるそうです。

「みかさんのお腹は皮膚もすごく綺麗だし、帝王切開もしていないし、再建手術ができる。
みかさんには、再建手術方法が一番いいんじゃない」と説明されました。

私は「先生がそれでいいって思うんだったら、それは自分の体質に向いているんでしょ」と速攻で再建手術に飛びつきました。

先生の言葉があったから自分の気持ちに気が付けた

今まであんなにかたくなに「再建はやりません」と言っていたのに、井上先生が「君は再建したら変わるよ」と再建手術を勧めてくれたのは、私の気質を見抜いていたからじゃないでしょうか。

私も「再建手術はやらない」と言いつつ、心の中では、「やっぱりおっぱいが欲しいな」とずっと思っていました。

でも人工乳房で生活してみたからこそ、おっぱいがもう一度欲しい気持ちが膨らんだとも言えます。
本当に井上先生にはもう感謝しかないですね。瞬時に女性の気持ちを見抜けるのがすごいなと思っています。

参考動画