本記事は、YouTubeで発信されている「乳がんサバイバー看護師」ゆりさんの体験談をまとめたものです。
ゆりさんの担当医である、大阪医科薬科大学 乳腺・内分泌外科 岩本充彦先生の「ゆりさんの一人の患者として、また看護師として、まだ見ぬ誰かを、あるいは多くの乳癌患者を、自身の経験を語ることで勇気づけたいとする想いを繋げていきたい」というお気持ちに賛同して作成しています。
本記事は、ゆりさんご本人の主観を優先しているため、科学的根拠等について医師監修は行っておりません。
そのため、ご紹介内容の実例は全てを保証するものでは無いことをご留意ください。
抗がん剤は細胞分裂を阻害する薬なので、がん患者にとってインフルエンザの感染は注意が必要です。
今回はインフルエンザ感染のこと、血液中の好中球を増やすためにゆりさんが使っていたジーラスタというお薬について、そしてインフルエンザの予防接種についてのお話になります。
ウイルスと戦う好中球は抗がん剤の影響で減少
ジーラスタという抗がん剤は、がん細胞がどんどん増えていくのを抑える薬です。
人間は常に細胞分裂をして生きており、血球と呼ばれる白血球や赤血球には寿命がありますが、中でも好中球と呼ばれる細胞の寿命は数日だけです。
人間は骨髄で血液を作っているのですが、そこにジーラスタという細胞分裂を阻害する薬が入ってきた時、骨髄にも影響が出て細胞分裂ができなくなり、好中球の数が減ってしまいます。
骨髄が血を作りだそうとする時に骨痛が発生
人間の体内にウイルスが入ってきた時、最初に好中球がウイルス細胞を取り込んでウイルスを消滅させますが、それと同時に好中球も消滅していきます。
つまり体内にウイルスが入ってくればくるだけ、体内の好中球はウイルスと戦ってどんどんなくなっていきます。そうなると、なくなった分の好中球をまた作らなければいけません。
インフルエンザになった時に関節が痛くなる経験をしたことがある方は多いと思います。この痛みはインフルエンザ菌が入ってきた時に好中球が働いて、血球が少なくなったために、骨髄が血を作り出そうとすることが要因で発生するもので、骨痛と呼ばれています。
実は先述した好中球以外にも「キラーT細胞」など、ウイルスに対応する細胞は色々あるんです。
今回は好中球が特に寿命が短く、増殖する際に抗がん剤の影響が強く出てしまい、増殖しづらいということを知ってほしくてお話しました。
ジーラスタを使って出る痛みは効果の表れ
ジーラスタという薬は、好中球を作るためのいわば栄養素みたいなものだと考えて良いです。
抗がん剤の影響で好中球は減っていきますが、そこにジーラスタを打つことで好中球の数が下がっていく坂をなだらかにすることができます。
私は抗がん剤を使った時もしんどかったんですけど、ジーラスタを使ったときの方が骨痛がすごくしんどくて…倦怠感も強かったので、先生に痛み止めを出してもらっていました。
ジーラスタやgcsf 製剤と呼ばれる抗がん剤を使われている方の中には、肩が痛いなど、インフルエンザと似たような体の痛みの症状が出る方がいます。これは抗がん剤の影響ではなくて、ジーラスタの効果なんです。
私も痛み止めを出してもらうなど、先生と相談してできるだけ痛みを軽減していたので、痛みに悩んでいる方は先生に相談し、薬などで痛みをコントロールしてもらうと良いでしょう。
ジーラスタのメリットは好中球の数値維持、デメリットは高額な点
ジーラスタで最もデメリットとなるのは、高額な点だと思います。
1本で多分3万円くらいですから、2つだけでおそらく4万円ぐらいの医療費がかかってくると思います。
ただ好中球の減少をゆるやかにするメリットも大きく、私は4クールにわたって行なうAC療法の中で、ジーラスタを使ったおかげで好中球の数値が1,000を切ることがありませんでした。
好中球の数値が1,000を切ると、先生が「ちょっと治療の続行は考えましょう」となるんですけど、そういうことなく抗がん剤を投与し、治療を続けることができたのはジーラスタの効果だといえます。
インフルエンザワクチンのメリットは罹患時の重症化リスクの低下
インフルエンザワクチンは化学療法を始める前段階での投与をガイドラインで推奨されています。
私の場合はちょうど11月ぐらいから抗がん剤を始めました。
ワクチンは打つと副反応で体調が悪くなることもありますし、打ったとしてもインフルエンザにかかる場合があると思います。
国立感染症研究所でのインフルエンザの定義は「風邪の強いもの」みたいな一見軽い形で書かれているんです。でも「風邪の強いもの」って、特に高齢の方や妊婦の方は重症化しやすくて、肺炎になってしまうこともあります。
そこでインフルエンザワクチンを打っていると、肺炎等の重症化リスクを下げることができるのがメリットです。
がん患者はインフルエンザワクチン接種のタイミング見極めが必要
私の場合は、抗がん剤でAC療法の1回目を受けるまでにインフルエンザワクチン接種ができなかったんです。
先生に「インフルエンザワクチンが推奨になっているんですけど、まだ打ててないんです」というお話をしたとき、「好中球には寿命があって、抗がん剤を投与してから好中球が一番下がりやすいのが6日目から14日目です。なのでそこを避けて投与したら好中球もそこまで下がらないけれど、もしかしたら普段よりワクチン接種後がしんどいかもしれない」と言われました。
それでも「打ってもらって大丈夫です」と言って、1番最初の抗がん剤を打って、次の日にジーラスタを打って、むちゃくちゃしんどい関節痛もある3日目にインフルエンザワクチンを打ちました。
接種の次の日はちょっと熱っぽかったっていうのはあったんですけど、特にひどい肺炎になるということもなく、その年はインフルエンザにかかることもなく経過しました。
ワクチン未接種での通院はリスク!早めの接種が重要
今年はすでに150万人くらいの方がインフルエンザに罹患していて、ゾフルーザという去年の3月に作られた新薬剤とかを使って治療されている方もたくさんいると思います。
今ってインフルエンザの患者さんがすごく多いというのもあって、病院に行くこと自体って結構危ないことだと思うんです。
だからまだインフルエンザのワクチンを打っていないという方は、ケースデータとかを見ながら先生に相談し、インフルエンザの予防接種を受けた方がいいかとか、打ちたいけれどまだの方なら先生に「打ってもいいよ」って言われたら打った方がよいのではないかと思います。
インフルエンザワクチンは接種してから抗体ができるまでに2週間くらいかかるんですけど、ワクチンを接種することでインフルエンザにかかることはほぼないと言われています。
そして2週間経って抗体ができれば、万が一罹患しても重症化を防げるというメリットがあるので、打っておけば不安も無くなります。
次回は、パクリタキセルのお薬を1週間に1回投与したことについてと、投与してみて感じた副作用についてお話したいと思います。
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