本記事は、YouTubeで発信されている「乳がんサバイバー看護師」ゆりさんの体験談をまとめたものです。
ゆりさんの担当医である、大阪医科薬科大学 乳腺・内分泌外科 岩本充彦先生の「ゆりさんの一人の患者として、また看護師として、まだ見ぬ誰かを、あるいは多くの乳癌患者を、自身の経験を語ることで勇気づけたいとする想いを繋げていきたい」というお気持ちに賛同して作成しています。
本記事は、ゆりさんご本人の主観を優先しているため、科学的根拠等について医師監修は行っておりません。
そのため、ご紹介内容の実例は全てを保証するものでは無いことをご留意ください。
注射が入りにくい場合、体内に直接チューブを入れて点滴を行うための「CVポート」という器具を利用する場合があります。
今回はゆりさんが実際にCVポートを挿れた感想や、その後の生活に関する体験談になります。
薬の副作用である血管痛から解放された
CVポート手術後の私の率直な感想は「挿れて良かった」でした。そう思った理由は「血管痛がない」からです。
私は「パクリタキセル」という薬を使うと血管痛が出ます。
それから「ジェムザール」という薬も始めたのですが…投薬開始時に薬剤師さんから「ジェムザールも血管痛が結構出るけど大丈夫ですか?」と聞かれました。
そこで「私、実はこの前CVポートを挿れたんです」と伝えると「それなら血管痛はないから、血球減少にだけ気を付けてね」と言われました。
昨日もジェムザールを使いましたが、血管痛は全く感じず、CVポートの傷も問題なしでした。
首回りに器具を入れるためのくぼみができる
CVポートを挿れた部分の傷はまだ治りきっていません。首にあるくぼみの部分にはチューブを接続するための器具が入っています。
実際にチューブが入るのは「内頸静脈」という首の静脈です。この首の静脈からチューブを挿れて、首のくぼみにある丸い器具に接続されるようになっています。
患部の青あざや出血もなくなる
CVポートでチューブを入れても、今のところ青あざにはなりません。
従来の静脈点滴だと、腕の血管から点滴を取って、テープで針をグッと押さえて固定するため、その時の圧迫によって青あざができます。
一方でCVポートは、チューブ内に残った血液を出し切るための薬液を流した後にチューブを抜けば、皮下出血だけなのですぐ止血できます。
CVポートにしてからは、抗がん剤治療後に青あざになることも、血が止まらないこともありません。
腕の出血や衣類の汚れと無縁に
私は血が止まりにくい体質な上に、左腕が痺れていて荷物が持てません。
なので腕に点滴をしていた時は、点滴をとった腕でどうしても荷物を持たないといけない時がありました。
そうすると荷物で圧迫したせいで点滴した場所から出血して、服に血が付いていることもあり…悩みの種でした。
でもCVポートにしてからはそういう悩みもなく過ごせています。
CVポートが使用できるまでには3日~5日かかる
CVポートを挿れた直後はもちろん痛みがありましたが、「眠れないほど痛い」ということはありませんでした。
私の場合はCVポートを挿れて1週間後がちょうど抗がん剤の日だったので、ここで初めてCVポートを使いました。
CVポートを挿入してから、使用できるまでの期間は術後3日から5日後とされていて、病院や患者の体調、挿入したポートのメーカーによって日数が前後します。
私が挿れたCVポートは「術後5日経っていれば使って大丈夫」ということでした。
服も制限されずいつも通り生活できた
CVポートを挿れていると、首回りに異物感というか…どうしても「器具が入っている感」があって、それは周りの人が見ても分かるレベルです。
首元が目立つのが気になる方は、首回りを隠せる服を選びましょう。
ただ私はこの時むくんでいる上にぽっちゃりしていたので…チューブが出る部分も首を伸ばさないと分からなかったので、普通にVネックも着ていましたね。
傷自体はちょっとポコッと出ているくらいなので、日常生活で服装の制限で困ったことはありませんでした。
CVポート挿入側で重い荷物を持つことだけ要注意!あとはメリットだけ
私は1度CVポートを挿れたことを忘れて、重いリュックを勢いよく背負ってしまい、首元の器具がグッと押されたことがあります。
これをきっかけに「リュックサックを背負うのはやめよう」と思いました。
私が日常生活で気を付けたのはこのリュクサック問題だけですね。
他の問題…例えば「CVポートが入っているから、腕の運動ができない」とかはなかったので、私は今のところCVポートにメリットしか感じていません。
感染兆候がないかしっかり確認する
良いこと尽くめのCVポートですが、異物は異物です。なので「異物を身体に入れている」という意味では感染にはすごく気を付けなければいけません。
感染兆候がある場合は皮膚に「赤みが出る」「かゆみが出る」という特徴があるので、見逃さないようにしてください。
術後は縫合糸の影響で肌に変化があるけど心配なし
CVポートを挿れるくらいのサイズの傷だと、術後に縫合が必要です。でも今は「吸収糸」と呼ばれる人体に溶ける糸を使うので、抜糸は不要です。
吸収糸といっても、すぐに溶けるわけではなくて、傷がふさがる時期と同じ…およそ3か月から6か月かけて徐々に溶けていきます。
糸が溶けるまではしばらく、触った時にチクチクしたり、縫合部分が白くなったりします。
皮膚が白い部分は、縫合糸が当たっている場所です。皮膚の色が違うので気になると思いますが、徐々に無くなっていくので心配しないでください。
合併症のリスクもあるため先生とよく相談を
CVポート挿入部周辺の皮膚に赤みやかゆみの症状が出た時は、すぐ病院に行ってください。
実際にCVポートを挿れた方で、「挿入時、すでに感染していてCVポートを3日で抜いた」という方がいます。
幸いにも私はCVポートを挿れてから、制限やトラブルなく生活できていますが…CVポートは「合併症が確実にゼロ」という手術ではありません。
手術を希望する場合には、現在のがんの治療状況に加えて、「今後、どれくらい抗がん剤を使うのか」「現状、どれくらい点滴が取りづらいのか」ということを確認する必要があります。
今、CVポートを挿れるか悩んでいる方は、先生としっかり話して「治療を続けるにあたって、どうするのが1番楽かつメリットがあるのか」をきちんと知ってから、手術の決断をしてほしいです。