本記事は、YouTubeで発信されている「乳がんサバイバー看護師」ゆりさんの体験談をまとめたものです。
ゆりさんの担当医である、大阪医科薬科大学 乳腺・内分泌外科 岩本充彦先生の「ゆりさんの一人の患者として、また看護師として、まだ見ぬ誰かを、あるいは多くの乳癌患者を、自身の経験を語ることで勇気づけたいとする想いを繋げていきたい」というお気持ちに賛同して作成しています。
本記事は、ゆりさんご本人の主観を優先しているため、科学的根拠等について医師監修は行っておりません。
そのため、ご紹介内容の実例は全てを保証するものでは無いことをご留意ください。
がんの転移検査では造影CTを撮ります。
造影CTを撮った後は先生に「今日は水を多めに摂って下さい」と言われますが、
多めとはどれくらいの量なのかよく分かりませんよね。
今回は、造影CT検査後に飲むべき水の量についてのお話になります。
CT検査は、身体のスライス映像を撮影して病変を見つける検査
CTとは、Computer Tomographyの略で、人体を輪切りにしたスライス映像を撮影することです。
CTで撮影した映像を見ると、レントゲンやエコーでは見えないものが見えます。
つまり、より細かい病変を見つけるための検査です。
「再発」と「転移」の違いは原発巣と繋がっているかどうか
今回、私がCT検査をした理由は、遠隔転移の確認のためです。
私の場合は最初に見つかった乳がんが「原発巣」です。
なので胸から血管が繋がっている部位に見つかるがんは「再発」です。
一方で「原発巣」と関係の無い部位…例えば卵巣や肝臓、肺にがんが見つかった場合は「遠隔転移」です。
今回撮ったCTでは、肺や肝臓、卵巣といった原発巣と関係ない新たな場所にがんが無いか確認するために行ないました。
CT検査の方法は2つある
CT検査には2つの種類があります。
①:造影剤を使って撮影する造影CT
②:造影剤を使わない単純CT
腫瘍は造影剤を使うと診断がつきやすくなるので、私も今回は造影剤を使ってCTを撮りました。
「造影CTの方が確実に診断できるなら、全員造影CTにしたら良いんじゃない?」と思いますよね。
なぜ全員が造影CTにしないかというと、造影CTは造影剤を使うため、患者さんによっては制約やリスクがあって撮影できない方がいるからです。
腎臓の悪い方、水分摂取に制限のある方は造影CTには注意
造影剤の使用に注意が必要な方の特徴としては、
①:腎臓の悪い方
②:水分摂取の制限がある方
です。
造影剤は使用後に腎臓から排出されます。
腎臓の機能が正常ならば、およそ6時間で90%の造影剤が体外に排出できます。
しかし腎臓が悪いと造影剤の影響で腎臓が疲れてしまって、「造影剤性腎症」という別の病気になる可能性があるので、投与には注意が必要です。
造影剤でアレルギー反応が出て、重篤な症状になることも
造影剤も一種の薬なのでアレルギーが出る方もいます。
最悪の場合、「アナフィラキシーショック」で呼吸が止まる可能性があります。
アレルギー反応の有無は、実際に薬を使うまで分かりませんから注意が必要です。
特に喘息のある患者さんは、使う薬を慎重に選んでいます。
つまり造影CTは誰にでもできるわけではなく、患者さんの体調や体質に応じて必要な時だけ行なう検査なんです。
造影CT前は食事制限がある
造影剤でアレルギー反応が出て、万が一アナフィラキシーショックになってしまった時は、呼吸が止まらないように補助するチューブを入れる処置をします。
チューブは気道を通していくので、胃にものが入っていると嘔吐、嘔吐が原因で誤嚥性肺炎になるリスクがあります。
そうなると呼吸を補助するためのチューブの通り道も見えづらくなり、救命処置が遅れるので、造影CT前には必ず食事制限があります。
食事制限はあるが、水分摂取は検査直前までOK
私が造影CTを受けた病院では、「検査を受ける3時間前から食事NG、水分は直前まで摂ってOK」と決められていました。
食事制限が検査の何時間前と言われるかは、病院によって多少違いますが、水分は基本的にギリギリまで摂れます。
ただ、心臓が悪くて水分制限をされている方や腎臓が悪い方は、水分をたくさん摂るのが厳しいです。
なので持病がある、もしくは身体状態が良くない患者さん以外は、水だけはギリギリまで摂ってOKですし、むしろ「たくさん飲んで!」と言われます。
造影剤の副作用を避けるためにもコップ2杯の水分摂取を
検査前に水分を十分に摂っているかどうかも、造影剤の副作用に影響します。
私は検査直前までかなり水分を摂っていたので、副作用はほとんど出ませんでした。
副作用が出ちゃうとしんどいので、水を飲むだけで回避できるなら良いですよね。
検査前の水分摂取量について、パンフレットには「検査の1時間前までにコップ2杯分、約400ミリ」と記載がありました。
なので、検査前には目安としてコップ2杯分の水を摂ってほしいですね。
造影CTの検査中は身体が温まり、トイレに行きたい感覚も
造影CTの検査中は、造影剤の影響で身体がポカポカしてきます。
私は首元から膀胱の方にかけて、最初はホッカイロぐらいの暖かさを感じ、ピーク時はサウナに入った時くらい暑かったです。
その暑さが引くと同時に検査終了という流れでした。
私の場合、検査中にお腹に熱を感じると、なんとなくトイレに行きたくなりました。
トイレに行きたくなる感覚は、造影CTを経験された多くの方が感じるようで、薬の影響なので心配しなくて大丈夫みたいです。
検査後も3時間以内に500ミリ以上の水分摂取を
造影CTの検査が終わってからも「お水をたくさん飲んでくださいね」と言われます。
でも具体的にどれくらい飲むかは言われませんでしたが、書類に「検査後3時間以内に500ミリの水分を摂って下さい」と記載がありました。
検査後も水分を摂る理由は「こまめに水分を取ってトイレに行って、造影剤をおしっこと共に出す」ためです。
おしっこは水分を摂ればたくさん出るし、逆に水分を摂らなければ出ません。
なので検査後も「3時間以内に500ミリ」を目安にしっかり水分を摂って、造影剤を外に出すようにしましょう。
水分はこまめに摂るのがおすすめ
身体に必要な水分量って年齢や体格で1人1人違うので、「絶対にこれくらいの水分を摂って」と一概には言えません。
でもどんな量でも、水分って1度に大量に摂取するのは難しいですよね。
水分を摂る時のポイントは「こまめにちょっとずつ」です。
水分は一気に大量に摂取するよりも、こまめに飲んだ方が体内の循環に良いとされていますし、造影剤の排出も促進されます。
なのでCT造影検査の前後はこまめな水分摂取を心がけてみてください。