本記事は、YouTubeで発信されている「乳がんサバイバー看護師」ゆりさんの体験談をまとめたものです。
ゆりさんの担当医である、大阪医科薬科大学 乳腺・内分泌外科 岩本充彦先生の「ゆりさんの一人の患者として、また看護師として、まだ見ぬ誰かを、あるいは多くの乳癌患者を、自身の経験を語ることで勇気づけたいとする想いを繋げていきたい」というお気持ちに賛同して作成しています。
本記事は、ゆりさんご本人の主観を優先しているため、科学的根拠等について医師監修は行っておりません。
そのため、ご紹介内容の実例は全てを保証するものでは無いことをご留意ください。
「自分ががんである」という事実を家族や友人に伝えることは辛いですよね。
また、「病気の事実を伝えたことで、周囲の対応や自分を見る目が変わってしまったら」という不安もあると思います。
今回は、ゆりさんにがんの確定診断がつくまでの間、家族や友人にどう自分の状況を伝えていたのか、そしてどんな声かけや対応が嬉しかったかというお話になります。
「がんの可能性がある」段階では誰にも状況を伝えず、1人で泣くことも
がんの確定診断前って気にしないようにしていても色々考えてしまって、食事中やテレビを見ている時など、1人でいる時にふと「私は乳がんかもしれない」という思いが浮かんでくるんです。
「自分はがんかもしれない」と思うだけで、ボロッと涙が出てくることもありました。
さらにがんの確定診断がつくまでは、私は何度泣いたか分からないくらい泣いていました。
それでも、最初に胸にしこりを見つけて、クリニックや大学病院に行っている間は両親には何も伝えず、生検するまでは他の誰にも病気の状況を伝えませんでした。
1人で不安を抱えきれなくなり、友だちに告白
職場では通院や体調を理由に勤務変更をすると、同じ部署の友だちにバレてしまうので、生検が終わったタイミングで伝えることにしました。
私は「自分が病気かもしれないなんて知られたくない」という気持ちが強かったので、結構自分の中に不安や色々な思いを溜め込んでいました。
それで不安でいっぱいになって、自分だけじゃ抱えきれなくなった時、友だちに「病気かもしれない。どうしよう」と伝えました。
生検の保証人がきっかけで家族に告白
生検を受ける段階で、私は家族にも状況を伝えました。
生検って小さい手術になるので、保証人が必要ということで…それが告白のきっかけです。
「胸にしこりを見つけたこと」
「クリニックで悪性の可能性が高いと言われたこと」
「大学病院で生検を受け、その結果を待つ段階に来ていること」
を両親に伝えて、手術の保証人欄にサインをもらいました。
そして検査結果が出る外来の日を伝えて「そこで一緒に話を聞いてほしい」と伝えました。
両親は私の告白を受け止め、変わらず接してくれた
私は1人暮らしでしたが、実家も近いのでちょこちょこ実家にも帰るような生活をしていました。
実家には祖母、両親、弟が住んでいて、私は3人兄弟ですが、兄は独り立ちしています。
私は最初、実家の家族全員ではなくて両親だけに自分の状況を伝えました。
そこで「もし乳がんだったら実家に帰ります。よろしくお願いします。」と伝えて…それを聞いた両親も「帰ってくればいいよ」という感じでした。
検査結果が出るまでの間も実家には帰っていたのですが、いつ帰っても変わらず「おかえり。何か食べる?」みたいな対応をしてくれて…いつも通りの日常を過ごせてすごく気が楽でしたし、心の支えになりました。
当たり前の日常の大切さを痛感しましたね。
家族が病気でも特別扱いせず、変わらない日々を一緒に過ごしてほしい
私は自分がその立場になったことはないですが、「家族が病気かもしれない」と分かった時、きっと周りの人は「何かしなきゃいけない」って強く感じると思います。
でも、特別なことって必要なくて、本当に今まで通りの当たり前の日常を過ごすことが大事なんです。
なので、「病気の家族に何かしてあげないと」とか「自分は何もしてあげられていない」と不安や焦りを感じている方がいたら、「何もしなくていいんだ」って少し気楽に構えてもらいたいです。
不安な時に弱音を吐いて相談できたのは看護師の友人たち
私は仕事をしていたので、勤務調整の関係から「自分が乳がんかもしれない」という状況を最初に伝えたのは職場の上司でした。
私の場合、不安になるたびに「8割方は良性腫瘍」と書いてある教科書のページを何度も読み返したり、親より友だちの方が話しやすかったので「どうしよう」と弱音を吐いたりしていました。
職業柄、友だちも看護師が多かったので「ステージ4だったらどうしよう」とか具体的な話もして、実際に乳がんにかかった時に備えて相談もしていました。
「頑張って」という言葉はかけてほしくなかった
闘病中の方には「頑張って」という言葉を言いがちですが、それは患者側からすると「いや、今も十分頑張ってるんだよ」とプラスに捉えられないんです。
しかも診断がつく前なんて、そもそも頑張れることが何も無いんです。
だから私は「頑張って」という言葉をできれば言ってほしくなかったです。
幸い私の友だちは看護師だからかもしれませんが、誰も「頑張って」と私に言いませんでした。
「自分の力だけでは頑張れることが何もないこと」「すでにめちゃくちゃ頑張っている人に頑張れなんて軽く言えないこと」を分かってくれていたんでしょうね。
「頑張れ」はしんどい、話を聞いて寄り添って欲しい
「頑張れ」という言葉って、結構しんどいです。
そう言われても「これ以上何を頑張ったらいいんだろう」とか「頑張れることが何にも無いんだけどな」って思って余計悲しくなります。
でもそんなことを言ってしまうと、周囲からすれば「じゃあどうすればいいの?」となりますよね。
そういう時には、話を「うんうん」「やっぱそうだよね。そこが一番嫌なんだね」と聞いてあげてください。傾聴ですね。
実際に私も「話を聞いてもらえて良かった」って思うし、「何も出来ないけど、一緒に頑張れるかな」って言ってもらえた時はすごく嬉しかったです。
検査結果ががんだったら本当に自分で頑張るしかないんですよ。
でも病気の告知にこれからの治療…と考えた時に本人は不安とかパニックで全く余裕がないんですよね。
そんな時に親しい友だちに話を聞いてもらえたことは、私にとってはすごく支えになりましたし、勇気を出して病気を告白して良かったなと思います。
病気の話で深刻になるのはその時だけ、あとはいつも通りの日常を
病気のことを周囲に伝えるのって難しいですよね。
でも必ずどこかで「伝えよう」と思うタイミングや理由があると思います。
がんの確定診断を待っている間って、ものすごく時間が経つのが遅くて…辛くて嫌でした。
1人で不安になる時もたくさんありました。
でも、そんな時に友だちとごはんに行ったり、お茶したりする時間は気が紛れたし、「次どこ行く~?」と楽しい予定を立てていると自然と笑顔になれました。
辛くて大変なことも多かったけれど、幸せな時間として残っている思い出もたくさんあるのは、家族や友だちの皆がいてくれたおかげです。
どうしても病気を伝える時は、重い雰囲気になると思います。
でもその話が終われば、いつも通りのバカな話だったり、これからの遊びの予定の話だったりを話せます。
「病気の家族や友だちに何て言っていいか分からない」と思っている方、決して本人に「何か言わなければいけない」わけではないということを覚えておいてください。
そしていつも通り、その時間を一緒に楽しく過ごしてほしいです。